巻頭言

藤原 精吾

 

  当障害年金法研究会は、「始めに制度ありき」の行政的年金制度ではなく、障害年金を必要とするすべての人に適切に年金が届くような社会保障の権利としての年金制度を目指して、2015 年から活動を続けてきた。

  今回のトピックは「年金制度改革への提言」である。

  現在厚生労働省社会保障審議会年金部会が進めている 2025 年年金制度改革の作業について、その対象が障害年金の問題に十分フォーカスしていないため、当障害年金法研究会からの提言を 2024 年 3 月 6 日に行なった。「提言」は現に行なわれている障害年金実務の問題点を指摘し、制度改革では、これをあるべき姿に改善できるよう具体的提言をしたものである。この申し入れは全国各紙で報道されたが、今も障害年金手続において生じている諸問題を考える上でも解決に向けての導きの星となるものである。

  本号はまた、この3年間に行なってきた研究活動(諸事例・判例の報告と討議)を記録している。更に本特集では、障害年金制度の基礎的研究として、障害者権利条約の理念、2022 年夏に行なわれた日本審査総括所見についての紹介、諸外国における障害年金制度、要保障事由としての「障害」とは何か、手続保障とは何かに関する諸論文を収録した。

  事例報告4例は、従来の年金行政により妨げられた権利行使を、行政手続、裁判を通じてどのように実現したかの具体例である。それは現在行なわれている年金行政の変更・改善を求める手がかりとなる。

  本号が、当研究会が目指す年金制度に向けての有益な情報を提供することにより、障害年金請求にかかわる当事者・社会保険労務士、弁護士そして研究者の活動と研究の道しるべとなることを願いつつ。