声明 「認定調書破棄事件の幕引きは許されない!」
内閣総理大臣 殿
厚生労働大臣 殿
2026年6月24日
障害年金法研究会
一 はじめに
2025年12月28日共同通信配信により社会に発覚した「障害年金認定調書破棄事件」について、国は2026年1月16日調査報告(「令和8年1/16付調査報告」[1])及び同年4月30日ヒアリング結果報告(「令和8年4/30付追加報告」)により調査を完了し、特段の問題は無かったものとして、本件を終焉させる姿勢である。
しかし、当会は、この事件を、長年の慣行とされてきた、法に基づかない、障害年金の恣意的認定方法、運営における暗部の一部が明らかになった事件と考えている。
本事件は客観的に検証され、そこで得られた教訓を真摯に受け止め、国が改善をすることが必須である。
このような事態が放置されることは障害年金分野に留まらず、日本の民主社会の劣化をも意味すると言わざるを得ず、何も問題がなかったごとき曖昧な幕引きは到底許されない。
二 本件に対する2026年1月30日付日弁連会長声明[2][3]
日本弁護士連合会は「障害年金の恣意的な判定を排し、公正な認定を求める会長声明」を発した。
厚労省自身の「自浄」作用には限界があると言わざるを得ないと、現状の厚労省のやり方はお手盛りであり、根本的に問題である旨厳しく批判されている。
しかし、国は日弁連からの意見をもまともに受け止めようとしていないように見受ける。
三 当会2026年3月18日意見書及び質問書[4]を受け止める姿勢は皆無
当会は「認定調書破棄問題に対する意見書及び質問書」(「当会3/18付意見書」)を2週間前に事前提出し、本年3月18日に厚労省・年金機構と面談し、回答を求め意見交換した。
その内容は同日の記者会見とともに当会HP[5]及び社会保障雑誌[6]に掲載している。
当会は
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不透明な手続きを続けてきたことの重大さ、反省が見受けられません |
認定調書破棄とは
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医療過誤を犯した医療機関が提訴されないようにカルテの不都合な箇所を破棄・改竄すること 他殺と考える警察が死体検案書を医師に依頼したが、自殺という検案書が出て、都合が悪いので、当該医師に秘密裡に別の医師に他殺との検案書が出てくるまで、何度でも作り直しを繰り返す等 に匹敵することで、責任者の首が飛ぶどころの話ではなく、公正な社会において、あり得ない事態です。 今回の事態の深刻さを受け止めていない厚労省の姿勢は極めて問題です。 |
と厳しく批判したが、
「平素より様々なご意見を頂き、ありがとうございます。頂いたご意見については組織内で共有させて頂きます。」
などと他人事のごとく素知らぬふりをしている印象であり、当会の指摘を真摯に受け止める姿勢は皆無である。
四 認定調書破棄に関する国の弁明には一片の説得力もないこと
当会3/18付意見書で指摘した本事件の問題点は何ら解消されていない。
① 「書類不備論」✖
日弁連も指摘するとおり、形式不備の指摘・是正をしないならば、職員の対面審査の意味はないはずであり、書類の形式不備を是正するために最初の医師に秘匿して次の医師に再認定を委託したということは論理矛盾であり、不自然極まる。
② 「スケジュール論」✖
新たな医師に再認定を委託したほうが時間は余計掛かるし、標準処理期間を途過している事案は実務上いくらでもあり、標準期間遵守のための認定調書破棄は必要だった論は説得力皆無である。
③ 「結果は妥当だった」論✖
認定結果が支給→不支給、1級→2級等の等級落ち等のあった事案について
「医療専門役に最終的な判断結果の妥当性について確認したが、疑義はなかった。」と
1/16報告にあるが、当該判断が正しいのか否かを外部から確認・検証できていない。
「厚労省の委託した医師だから信じろ」という趣旨と思われるが、厚労省の委託した医師を信じていなかったことが本件で露呈したものであり、何らの具体的証拠も示されないで「妥当」という結果を信じることはできない。
五 認定調書破棄の理由はどう総括されるのか。
1 不正の隠匿
形式不備の訂正も、サービススタンダードに合わせるためであることも、調書破棄(認定が無かったことにする)の理由にはまったくならない。
職員が自分の思い描く認定に導くためでなければ、秘密裏に廃棄する必要はないだろう。職員の恣意的判断により認定がなされという痕跡(証拠)を残さないために調書を廃棄した(当初の認定はこの世に存在しなかったことにする)と評価する以外に、今回発覚した障害年金調査廃棄を説明する合理的理由は考え難い。
2 「事務方が認定医をサポートしただけ」との弁明の問題性
2017年年末の大量支給停止予告問題を受けて、2019年7月から導入したセカンド認定(複数の認定医による認定)を、オモテでは認定の公平性を高めるものとして大々的に宣伝しつつ、裏では、職員に望ましくない最初の認定医の認定は職員の匙加減一つで無きものにしていたことは、表沙汰にはできない(認定調書を残せない)、闇の認定をしてきた事実を意味している。
ヒアリング結果の「認定医も万能ではない中で、事務方として認定医をサポートするのは当然」の開き直りは許されるべきことではない。
3 今後「不利益処分等となる事案は全て複数認定医の対象とする」とのことだが、今回の調書破棄案件は「複数認定医による認定」を意味しており、それをなぜ隠して、最初の認定をなかったことにしたのかについて理由の説明もなく、対策としてこれを打ち出すというのは、論理のすり替えである。
4 「認定医の誤りを職員が正したのだから良い」は誤り。
認定調書破棄の動機に、最初の認定医の認定が、審査基準に則っていないものだったということはあると思われる。
以下は、当会会員が裁定請求代理事件、(再)審査請求代理事件、訴訟事案等で実務上経験している障害年金の現在の実情である。
精神の場合なら、入院中に他の患者と少し話ができたからとか、家族の支援で生活が送れているからとか、B型に通所しているからとか、引きこもりでも短時間外出できている等の理由で2級としない、肢体障害なら、補助具なしで歩行できているから2級ではない(裁判での認定医による意見書)など、審査基準上の根拠がまったくない認定がある。これら審査基準を理解していない認定は確かに是正されるべきである。
職員からすると、最初の認定医にガイドラインを解説し、認定の問題点を指摘し補正を依頼することは正面切っては言い難かったということであろう。
しかし、審査基準を無視する認定医は同じ認定を繰り返す。
そのような誤った認定例があるならば、それを厚労省として教材とするべきであり、誤った認定が存在しなかったことにするべきではない。
誤った認定調書を組織としてその原因を解明し、年金機構・厚労省として公正な認定が全体として行われるよう検証と再発防止策が講じられるべきである。
現状、認定医の当たり外れにより認定にバラつきがあることは公知の事実と障害年金事案を多く担当する社労士会員等から指摘されており、その改善がなされない理由は、厚労省・年金機構が「認定医によるバラつきという不都合な真実の存在」を闇に葬り続けてきたからと言える。
5 認定医の正しい認定を職員が書き換えるために破棄したこともあると思われる。
上記4とは反対に、認定医は審査基準通りに認定したにもかかわらず、職員が恣意的に審査基準に反した認定に変更させている場合も少なからずあると思われる。
例えば、障害年金実務上、日本年金機構の運用として、
「障害者雇用中に精神障害者の2級は認めない」という運用をしているようである。
これは当然何ら明文の根拠がないどころか、精神ガイドラインが「障害者雇用の場合に1級と2級の可能性を検討する」に反している。
そのため、認定医が、ガイドラインを根拠に2級と認定した場合、年金機構職員が自分たちの流儀(闇ルール)に合致しないとして、認定調書を破棄したというようなことも行われていた可能性が否定できない。
今回廃棄予定で残っていた認定調書は約800件に過ぎず、何千または何万という廃棄済みの認定調書の中にそのような例があったことは否定できない。
なぜ、このような認定結果になったのか、全ての記録を残して、客観的に検証できるためには、請求者・市民が検証できるようにしなければならない。
職員や組織の暗黙の闇ルールにより、審査基準を軽視、無視した認定が長年行われてきており、今回発覚した認定調書破棄は、不透明・不公正・恣意的な現行障害認定の理不尽さを示し、障害年金行政に対する信頼を根底から喪失させ、障害のある人の生存権と尊厳に対する裏切りといっても過言ではない。
民主社会においてあり得ない、本事件の過ちについて、厚労省が一片の反省の弁すら語られないのは信じ難い。
六 多額の公費が掛かっていることの問題性
厚労省は3/18当会に対し、認定医に支払った報酬を次のように回答した。
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令和3年度 約3.2億円 令和4年度 約2.6億円 令和5年度 約2.4億円 令和6年度 約2.8億円 令和7年度 約2.6億円(2月分までの集計) |
令和6年度は45万件の認定件数であり、単純計算で1件約577円である。
今回廃棄予定だが残っていたのが3か月で約800件である。
1年で約3200件である。
ヒアリング結果には、認定調書廃棄の開始時期について
「記憶が定かではないが、障害年金センターが出来る前から行われていたのでは
ないか。」との声がある。
障害年金センターは2017年4月に開始している。
おそらく旧社会保険庁時代から行われていたと思われるが、遅くとも日本年金機構が設立された2010年からは行われたと思われる。
2010年~2025年16年間×3200件=5万1200件
5万1200件×577円=2954万2400円
約3000万円の公費が無駄に支出された可能性がある。
これらの無駄な公費負担に対する反省の言葉が全くない。
内閣総理大臣はこの点、どう考えるのであろうか。
また、立法府はどう考えるのであろうか。
七 認定医制度の問題
① 後医が前医に優越する根拠はない
4/30付追加報告の「3 対応策」では次の記載がある。
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今後は、原則として、同一の認定医に確認することとする。 やむを得ず別の認定医に依頼する場合であっても、 複数認定医による審査の対象とし、 当初の認定調書は審査書類として保存することとする。 |
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不利益処分等となる事案は全て複数認定医の対象とするとともに、 複数の認定医で判断が相違するものなど判断困難事案は、全て認定審査委員会で判定する |
これらの改善策は、厚労省・年金機構として本来実施される然るべき体制に過ぎず
抜本的対策にはほど遠いものの、当会の厳しい批判も「無駄ではなかった」と思われる。
② 処理件数の多さから既に破綻した体制であること
一人の認定医が3200~4500件を1年で審査する以上、1件数分程度しか審査に時間が掛けられないという現状の深刻な状況の指摘を改善する予定は何ら見受けられず、根本的な欠陥審査体制が維持されている。
③ 認定医に法的根拠はないこと
④ どこの誰かもわからない制度は許されないこと=認定医名簿を公開すべきこと
八 法令違反
以下の法令違反が問題となっているが、厚労省の弁明は説明になっていない。
① 行政手続法違反
② 公文書管理法違反
③ 個人情報保護法違反
九 厚労省から独立性のある第三者委員会により検証すべきこと
不祥事を起こした組織が組織職員をヒアリングして、客観的な検証をすることは無理である。
委員会で報告したからといって、当該調査に公正性が担保されるわけではない。
この点、厚労省は全く無視しているが、本件をこのまま放置することは日本の民主社会の過ちである。
一〇 認定調書の保存期間について
1 3/18意見書の訂正
この点、当会の3/18付意見書三11(7頁16~17行目)で
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保存期間は30年間を原則とすべきですが、申請者が生存中の廃棄はできない仕組みとするべきです。 |
としたが、これは当会の法令の確認不足があり、ここに謹んで訂正する。
理由は以下のとおり。
公文書管理法違反の点である。
「公文書等の管理に関する法律」(公文書管理法)は
2条2項別表で「日本年金機構」を同法を遵守すべき独立行政法人として指定している。
2条8項の「公文書等」の定義が「一 行政文書 二 法人文書」であり、認定調書は日本年金機構が保存している場合、「法人文書」に該当し、厚生労働省が保管する場合、行政文書にあたる場合もありえるが、少なくとも日本年金機構が法人文書について同法規定のとおり保管等する義務があることは明らかである。
同法11条等で独立行政法人は法人文書を適正に管理する義務がある。
同法12条で独立行政法人は法人文書の管理状況を内閣総理大臣に毎年度報告する義務がある。
同報13条は、(法人文書管理規則)と題し
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独立行政法人等は、法人文書の管理が前二条の規定に基づき適正に行われることを確保するため、第十条第二項の規定を参酌して、法人文書の管理に関する定め(以下「法人文書管理規則」という。)を設けなければならない。 |
とする
同法同条項に基づく日本年金機構は
「日本年金機構文書管理規程」を定め、法に基づき公表している。
そこに、日本年金機構の法人文書の保存期間の定めがある。
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日本年金機構文書管理規程 第5節 文書の保存 第31条 (法人文書の保存期間) 法人文書は、次の各号に掲げる文書の区分に応じ、それぞれ当該各号に定める期間保存するものとする。 1 第1類に属する文書 30年 2 第2類に属する文書 10年 3 第3類に属す る文書 5年 4 第4類に属する文書 3年 5 第5類に属する文書 1年 6 第6類に属する文書 事務処理上必要な1年未満の期間 7 その他常時利用する文書 常用 2項 前項各号の法人文書の分類は、別表の法人文書保存期間基準の定めるところによる。 別表(第31条関係) 法人文書保存期間基準 1 第1類(30年保存) ( 1 ) 諸規程のうち特に重要なものの制定又は改廃のための決裁文書 ( 2 ) 機構の業務運営上の重要な事項に係る意思決定を行うための決裁文書 ( 3 ) 機構を当事者とする訴訟の判決書 ( 4 ) 発議台帳及び諸規程管理台帳 ( 5 ) 移管・廃棄簿 ( 6 ) 公印の新調又は改廃のための決裁文書 ( 7 ) 前各号に掲げるもののほか、30年の保存期間が必要であると認められるもの 2 第2類(10年保存) ( 1 ) 諸規程のうち重要なものの制定又は改廃のための決裁文書( 第1 類第1 号に該当するものを除く。) ( 2 ) 通知のうち重要なものの制定又は改廃のための決裁文書 ( 3 ) 前各号に掲げるもののほか、機構の業務運営上の重要な事項に係る意思決定を行うための決裁文書 ( 4 ) 表彰を行うための決裁文書 ( 5 ) 機構を当事者とする訴訟に関するもの(第1類第3 号に該当するもの又は特に軽易なものを除く。) ( 6 ) 前各号に掲げるもののほか、1 0 年の保存期間が必要であると認められるもの( 第1 類に該当するものを除く。) 3 第3類( 5 年保存) ( 1 ) 諸規程の制定又は改廃のための決裁文書( 第1 類第1 号、第2 類第1 号又は第4 類第1 号に該当するものを除く。) ( 2 ) 通知の制定又は改廃のための決裁文書( 第2 類第2 号、第4 類第2 号又は第5 類第1 号に該当するものを除く。) ( 3 ) 指導、監査等に関する決裁文書 ( 4 ) 前各号に掲げるもののほか、機構の業務運営に係る意思決定を行うための決裁文書(第2類第3号、第4類第3号、第5類第2号に該当するものを除く。) (5)収受台帳及び保存期間満了前廃棄法人文書ファイル台帳 (6)前各号に掲げるもののほか、5年の保存期間が必要であると認められるもの(第1類及び第2類に該当するものを除く。) 4 第4類(3年保存) (1)諸規程のうち軽易なものの制定又は改廃のための決裁文書 (2)通知のうち軽易なものの制定又は改廃のための決裁文書 (3)機構の業務運営上の定型的な事務に係る意思決定を行うための決裁文書 (4)調査又は研究の結果が記録されたもの (5)前号に掲げるもののほか、機構の業務運営に係る施策の決定又は遂行上参考とした事項が記録されたもの (6)機構を当事者とする訴訟に関するもののうち軽易なもの (7)前各号に掲げるもののほか、3年の保存期間が必要と認められるもの(第1類から第3類までに該当するものを除く。) 5 第5類(1年保存) (1)通知のうち特に軽易なものの制定又は改廃のための決裁文書 (2)前号に掲げるもののほか、機構の業務上の軽易な事項に係る意思決定を行うための決裁文書 (3)前各号に掲げるもののほか、1年の保存期間が必要であると認められるもの(第1類から第4類までに該当するものを除く。) 6 第6類(事務処理上必要な1年未満の期間保存) 第1類から第5類までに該当せず、かつ常時利用としない法人文書 7 その他常時利用する文書(常用) 法人文書ファイル管理簿その他の業務に常時利用するものとして継続的に保存すべき法人文書
附則 年金記録関係 文書保存期間の特例 第6条 当分の間、第31条の規定にかかわらず、年金記録関係文書は、次の各号に掲げる文書の区分に応じ、それぞれ当該各号に定める期間保存するものとする。 (1)年金記録関係文書(年記第1類)150年 (2)年金記録関係文書(年記第2類) 120年 (3)年金記録関係文書(年記第3類) 100年 2 前項各号の 年金記録関係文書 の分類は、附則別表 の法人文書保存期間基準 (特例 の定めるところによる。
附則別表(附則第6条関係)
法人文書保存期間基準(特例) 1 年記第1類(150年保存) (1)年金記録関係文書のうち、資格取得届等に属する文書 (2)年金記録関係文書のうち、障害年金の裁定請求等に属する文書 2 年記第2類(120年保存) 年金記録関係文書のうち、遺族年金の裁定請求等に属する文書 3 年記第3類(100年保存) 年金記録関係文書のうち、老齢年金の裁定請求等に属する文書 |
保存期間の基準は要するに
年金機構という団体・組織にとっての文書と
障害者個人に関する文書、個人情報が書かれている類いの文書
は大きく性質が違うことから仕分けされている。
第1類~第6類は、組織の文書・法人文書
前者の組織文書も特例により、例えば原則30年間保存文書が150年間等に延長している。
個別障害者の裁定請求に関し、個人情報が記載されているものは全て特例である。
特例を再確認すると資格取得文書は、障害・老齢・遺族全て150年保存。
裁定請求関係文書は
障害150年
遺族120年
老齢100年
である。
つまり障害年金の裁定請求等に属する文書の保存期間は
150年間 である。
すなわち、障害年金の認定調書の保存期間は150年間である。
2 150年間保存義務に違反したことの重み
日本人の平均寿命は、男性82歳、女性87歳である[7]。平均85歳としても、150年間はそれを65年も凌駕しており、半永久ともいうべき保存を法が命じている。
それを、いとも簡単に、「職員が不要と思ったので廃棄した」という一連の本件の法令違反の罪は極めて重い。
当会もこの点を厚労省、メディア等に指摘してこなかったことは反省しているが、厚労省は当然このことを知っていたにも関わらず、国会答弁や当会面談等でもそしらぬふりをしてこのことを伏せてきた。悪質である。
3 150年保存原則を明確化すること
国は改めて障害年金認定調書を含む障害年金の裁定請求に関する個人記録の保存期間が150年間であることを日本年金機構等関係者に事務文書等で周知すべきである。
厚労省がことの重みを理解せず、対応しない場合は、公文書管理法第31条 [8]に基づき、内閣総理大臣が厚生労働大臣・日本年金機構に対して、改善勧告を発出するべきである。
4 「審査に使用しなければ法人文書でない」などという屁理屈は許されない
3/16の当会との面談で厚生労働省は、認定調書の公文書性の質問に対し
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審査に使用した認定調書は、日本年金機構の法人文書となります。 |
と回答している。
当会が怪しんでいるのが、厚労省が
「廃棄済みの認定調書は審査に使用した認定調書ではないので、法人文書ではありません」
という言い訳を用意するための上記回答ではないのか?の点である。
万一、その通りなのだとしたら、屁理屈であるし、そのような言い訳が通るならば、国家機関、行政機関のどこの公文書でも、途中で廃棄さえしてしまえば公文書でないので廃棄しても、開示請求されても不存在として不開示が許されることになり、公文書管理に掛かる法令の趣旨は完全の骨抜きになる過ちである。
今回廃棄された文書は、少なくとも厚労省が委託した認定医が一旦は、等級認定の判定に関する判断を記載した(一部不記載もあったと思われるが稀)ものであり、捨ててしまえば公文書等で無くなるという便法は絶対に許すべきでない。
一一 令和8年4/30付追加報告の問題点
1 身内調査による客観性の欠如
厚労省の4/30付追加報告では、約300名の職員等にヒアリングを行ったが特段問題は無かったという最終結果であるが、信用性が認め難い。
ヒアリング事項は要するに「私(厚生労働省)の部下や管理監督下の職員であるあなたは法令違反を犯しましたか?」というものである。
自分が法令違反を犯したならば上司、監督者も監督責任を問われる以上、素直に事実を白状するわけがない。
または、正直に告白した者だけがトカゲの尻尾切りのように見捨てられて責任を取らされる恐怖を感じて、正直に話せるものではない。
身内による身内に対する調査は、客観性・公平性が欠如しており、根本的に信頼性が疑われる。
2 主な意見に対する疑問
主な意見は次のとおりとしている。
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・審査を依頼し直すのは、記載誤りとか明らかに誤っている場合がほとんど。あとは、初診日の確認漏れや書類が整っていないことがわかり、確認し直すこともあった。 ・記載誤り、認定基準の読み誤りのほか、不利益処分等を行う際の理由付記文書 を作成するに当たり判断理由の記載の趣旨の確認のために、認定医に確認することはある。 ・サービススタンダードを遵守することが優先事項となっているが、対面審査の中で、遵守のためには、スケジュールが合わなければ、別の認定医に依頼せざるを得ない状況だった。 |
厚労省の1/16付け報告書の調査概要は次の記載。
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別の認定医に審査を依頼した理由については、認定調書に誤りや疑義があり、当初の認定医に確認の必要があったが、対面での審査が基本な中、標準的な処理期間(請求書を受理してから年金証書が届くまでの標準的な処理期間。障害年金は3ヶ 月)を遵守する観点から、主にスケジュールとの関係で別の認定医に依頼したものであった。 ・理由の記載内容と申請書類から読み取れる事実との関係など、趣旨を確認する必要があった。 ③関係書類の不備や確認漏れがあった ・初診日を確認する資料が整っていなかったことがわかった。 |
要するにヒアリング調査を開始する前の厚労省発表を上書きするだけのアリング結果であり、職員から率直に真実が述べられたものとは評価できない。
要するに「不当な業務執行に責任ある監督者自身による調査」という調査構造により真相は明らかになり得ないのである。
一二 総括
1 最低限、次を徹底するべきである
① 障害年金認定に関わる書類は全て当然150年間保管する。
② 認定医についても、全員の氏名を開示する。
③ 認定医が委託を受けた後は認定医番号は終身固定性として(医療専門役についても氏名を公開しないのであれば少なくとも番号などで、特定可能として)、その診療科、専門領域、臨床経験年数、認定医在籍年数、年齢などは少なくとも公開することが最低限必要である。
2 まとめ
認定調書破棄事件をこのまま幕引きして問題は無かったで終わらせるとしたら日本の社会保障行政において、民主社会の原則や法令を踏みにじった恥ずべき暗黒の歴史として残るであろう。
国政のどこかにすこしでも良心の呵責、良識が残っているならば、再検証を実施するべきである。
但し、本事件は、現行障害年金認定の運用の恣意的不透明さ、不公正さの一端が垣間見えた1エピソードに過ぎない。
本件の検証とは別途、当会の2024年3月6日付「障害年金2025年制度改革への障害年金法研究会からの提言書」[9]を参考に、この国の障害年金の認定方法の構造的課題の解決に向けた抜本的改革を行うことを改めて強く国に求める。
以上
[1] 賃金と社会保障1898号65頁
[3] 賃金と社会保障1898号62頁
[4] 賃金と社会保障1898号59頁
[6] 賃金と社会保障1898号47頁
[7] 令和5年厚生労働省政策統括官 簡易生命表等参照
[8] 第31条(内閣総理大臣の勧告)内閣総理大臣は、この法律を実施するため特に必要があると認める場合には、行政機関の長に対し、公文書等の管理について改善すべき旨の勧告をし、当該勧告の結果とられた措置について報告を求めることができる。
[9] 賃金と社会保障1876号9頁、当会HP掲載